スマホよりも紙の本の方が読みやすいのはなぜ? 呼吸も関連 〜最近の研究から〜

2022.3.04

 
   
   
   
   

つい先週のことですが、新聞の記事でとても興味深いのを見つけたのでシェアしたいと思います。

 

私自身、現在、エクササイズと呼吸に関連した内容で共同研究をしていることから、
医療分野以外でも呼吸についての論文にヒントがないかなと、気になってアンテナを貼っています。

 

それは、スマホよりも紙の本の方が、読解力が高まるという研究結果を、昭和大の認知科学の研究チームが科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表したという記事です。
そこに呼吸が関連しているかもしれないということで「本と呼吸?」の組み合わせに惹かれてしまいました。

 

その研究内容は、
同じ小説の一節をスマホで読む群と紙の本で読む群で比較し、
読解力に差が出るのかどうか?
そして読解力に呼吸と脳の活動性がどのように関係するかを調べたものです。

みなさんは、
スマホやタブレットで小説を読んだ経験ありますか?
経験のある方は、
スマホと紙の本では、どちらが読みやすいですか?

 

確かに、最近は電子書籍が増えてきて、選べるようになりましたが、
小説などを読むとなると、かさばっても、やはりこれまでの紙の本が良いなと思ってしまいます。
紙の方が疲れないし、ページのどの辺りに書いてあったと印象も残る。
読み返す時もパラパラとめくる作業が苦にならないし、
紙質も様々で、手で触った感じも色々。
古い本のひなびたような独特の匂い、新品の本の新しい紙の匂い。
視覚だけでなく、触覚、嗅覚、色々な感覚が関係していそうです。

なんと言っても本の厚みの今どのあたりを読んでいるかというのがわかって、
分厚い小説なんかは、真ん中まで来たな、とか、ゴールが見える。
読み終わって本を閉じた時の、なんとも言えない達成感というか名残惜しさというか。

読みたかった本を読む時って、通勤途中や新幹線の中、コーヒーを淹れて、あるいはベッドにゴロンとしながら、リラックスしているイメージだけど、
スマホと本では確かに何か違う。
スマホやタブレットに分厚い小説が何冊も収まっていつでも気軽に読めるのは良いけど、
画面が小さくて疲れそうだし、なんとなく小説を読むには味気ないし。

 

面白いな〜と思って、原文を探してみました。

Scientific Reportより
Reading on a smartphone affects sigh generation, brain activity, and comprehension
https://www.nature.com/articles/s41598-022-05605-0

 

記事の内容はオープンアクセスなので、英語ですが全文を読むことができます。
研究データや、研究方法(様々な条件設定)詳細は全て上記の文献に出でいますので、
ここでは私の解釈できる範囲で内容をざっくりとまとめてみました。

 

34人の健康な被験者に
2種類の同じ小説の2節分をスマホか紙の本を読んでもらい、直後に読解力のテストをした。
また測定のフェーズを以下の4つに分け
読書前、読書中、読書後の2分間、テスト中

そして、この4つのフェーズで呼吸機能と、脳の前頭葉の活動性を測定した。

 

その結果
どちらの小説も、紙の本の方が読解力のスコアが高かった。
深く呼吸した回数は、紙の本の読書中の方が最も多く。
前頭葉の活動性は、スマホの読書中でもっとも高かった。

 

この結果は、スマートフォンの読書の方が紙の本よりも深い呼吸が抑制され、
呼吸の抑制と前頭葉の過剰な活動により、読解力の低下となっているのがわかる。
前頭葉の過剰な活動は、認知負荷が増えている、つまり理解しようと脳がフル回転している状態。

 

スマートフォンの使用により深い呼吸が減少するのは、
最近の研究ではスマートフォンから発生するブルーライトにさらされることで、覚醒や興奮が引き起こされる傾向があるのと関係があるかもしれないとのこと。

つまり、深い呼吸の低下と前頭葉の過剰な活動は、ブルーライトにさらされることにより、認知負荷が高まることと関係があるのではないか。

 

以上のことをまとめると、
紙の本の方は、内容を理解しやすいため、リラックスして読めるから呼吸が自然に深くなる。
スマホの方は、より注意力を高めながら読まなくてはいけないので、緊張状態になりやすく深い呼吸はあまりしない。

 

そこで、このようにも
パンデミックでスマホなどの電子媒体の使用量が増え、睡眠不足や運動不足などのネガティブな影響が言われているが、
スマホなどでの読書中に、あえて意識的に深い呼吸をすることでリラックスできるよう、心がけることが必要。

 

今後も、視覚環境、認知機能、呼吸、脳の活動性の関係をさらに追求して研究をしていくそうなので、とても興味深いです。

 

ちなみに、どの小説が使われたかというと、
村上春樹作「ノルウェイの森」と「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

 

私は寝る前にベッドで眠くなるまで小説を読む派ですが、
リラックスしてるんだな〜思いながらブログを書いています。
もちろん紙の本です!

 

スプリングス代表
濱口由美子