前回との間が空いてしまいましたが、肋骨の大まかな枠組みがわかったら、いよいよ筋肉について見ていきましょう。
肋骨は胸骨と背骨と一緒に、ダイナミックに形を変えるカゴのような構造を作っていることを前回の肋骨編(2)で説明しました。
そのダイナミックな動きを作り出すのは筋肉、しかも体の中でも起きな部分を占める肋骨には、たくさんの筋肉が色々な方向から付いています。この方向の違いがダイナミックな動きを生み出すのですが、どこか一部の筋肉が硬くなったり弱って働きにくい状態になると、ダイナミックな動きができなくなってしまいます。
果たして、そうなると何が困るかと一番に考えつくのは「呼吸」ですね!
深部腹筋など体幹の深層筋を働かせるのは呼吸がベースになっています。
呼吸に一番関係のある筋肉は横隔膜ですが、それは次回以降の、呼吸と体幹の安定についてさらに詳しく説明していきますね!
それに、
大きく深呼吸したり、ランニングなどで効率的に呼吸する、そのためにも肋骨を含めたカゴ(胸郭)が風船が膨らむように弾力のあるイメージで動いてほしいですよね。
今回はもう少し肋骨の全体をイメージできるように、肋間筋という筋肉について説明します。
<肋間筋は3層構造>
下の図を見てみましょう。
肋骨と肋骨の間についている薄っぺらい筋肉が3層になっているのがわかりますか?
外から順番に外肋間筋 内肋間筋 最内肋間筋
これらの筋肉は、肋骨間の隙間を埋めて支えるだけでなく、肋骨を動かす、つまり肋骨の間を広げてカゴを大きくしたり小さくしたりと、重要な役目をしています。
よく見ると斜めになって、外肋間筋と内肋間筋が互いに交差しています。これによって効率よく呼吸できるのです。
それぞれ働きを見ると、
外肋間筋 吸気で最も働く。肋骨を上に引き上げる。
内肋間筋 呼気で最も働く。肋骨を下に下げる。
最内肋間筋 内肋間筋とともに働く。
それぞれ小さな動きですが、全体として大きなカゴを作っている大事な要素。呼吸の主役である横隔膜の動きを助ける、呼吸補助筋の一つ。

もう少し拡大して外側の皮膚と、胸郭の内部にある肺との関係を見ていくと、下の図のようになります。
薄い紫は肺。最も内側です。最内肋間筋と内肋間筋の間に神経、動脈、静脈が挟まれています。
ダイナミックな呼吸でこれらの組織も一緒に動きます。
あばらを折った、というのはよく聞いたりしますね。肋骨骨折では、これらの筋肉の引っ張り合いのバランスが崩れ、肋骨が不安定になるため、呼吸がしにくくなります。呼吸をするだけで動いてしまうので、骨折したところが肺、心臓、または神経や血管を損傷してしまう可能性があります。バンドなどでしばらく固定するのはこのため。

胸郭全体、胸郭の中身の多くを満たす肺、底辺の部分の横隔膜の関係をざっくり表したのが下の図。
ここには筋肉は描かれていませんが、水色の薄い膜が肋間筋及び肋骨と肺の間にあるだけ。
肺は中でこんなにぴったり満たしてるんですね。
一番底辺にあるのは、次回のテーマ「横隔膜」。

さて、胸郭の全体のイメージができたら、ちょっとご自分の体で体感してみましょう!
片手を頭の方にあげたら、ゆっくり体幹を側屈してみましょう。一番上の写真のようなマーメイドというエクササイズみたいに。
手をあげた側の肋骨と肋骨の間が、アコーディオンのように広がるのをイメージしてみましょう。隙間が広がっていくのが触っているとわかります。肋間筋がストレッチされているということなのです。